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オーストンオオアカゲラ、そして奄美大島の自然を守っていくために
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貴重な島々である奄美群島とそこに生息する動物たち
- 奄美群島は鹿児島県南部に位置し、奄美群島の中の奄美大島、徳之島は2021年に世界自然遺産に登録されました。その奄美群島には世界でそこにしかいない固有種や固有亜種が多く生息しています。哺乳類では国指定特別天然記念物で国内希少野生動植物種(以下、国内希少種)のアマミノクロウサギや、国指定天然記念物のアマミトゲネズミ、両生類では県指定特別天然記念物で国内希少種のアマミイシカワガエル、鳥類では国指定天然記念物で国内希少種のオオトラツグミやオーストンオオアカゲラ、同天然記念物のルリカケス、国内希少種のアマミヤマシギなど、希少な生物が多く生息している貴重な島々です。今回対象となっているオーストンオオアカゲラはキツツキの仲間で、奄美群島の中でも奄美大島にしか生息していない希少な鳥です。
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オーストンオオアカゲラの保全の必要性
- 多くの希少生物が生息している奄美群島では、保全のための様々な取組がこれまで行われてきました。鳥類については、これらの取組によって危機的状況を回避して回復傾向にあり、明るい兆しが見えてきています。しかし、問題が全て解決されたわけではありません。オーストンオオアカゲラは、保全に必要な情報である生息数や遺伝子の多様性などの実態が十分に把握されていないのです。生息数については、個体群を維持するために十分な数であるかを判断するための重要な情報です。では、遺伝子の多様性についての情報はどうでしょうか?オーストンオオアカゲラは狭い島の中だけに生息しているため、同じような遺伝子情報を持った個体間でのみ交配を繰り返し、遺伝的な多様性が低い恐れがあります。多様性が低い場合、病原菌による感染が広がるとそれに対応できる個体が出てきにくいため、一気に絶滅の危機に瀕する可能性もあります。環境悪化についても同じことが言え、環境悪化に対応できる個体がいなければ絶滅の危機に瀕することになるのです。そのため、遺伝子の多様性の情報はとても重要な情報です。
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まず知ることから始めなければいけない
- 私たちはオーストンオオアカゲラの遺伝的な多様性が低いのかどうかをまず知る必要があります。何かがきっかけで絶滅に瀕しないようしっかりと保全対策に取り組んでいかなければなりません。オーストンオオアカゲラの遺伝子の多様性を調べるためには、捕獲して血液を採取する必要があります。この調査では最低10個体分の遺伝子情報を集めたいと考えています。血液は翼の裏側にある翼下静脈から採取しますが、50μl(マイクロリットル)程度と微量でよいのでオーストンオオアカゲラの健康に影響を与えるものではありません。
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生物多様性の保全につなげていく
- 現在、奄美大島は湯湾岳周辺など一部の森林が2021年に世界自然遺産に登録され、森林保全が進められています。しかし、オーストンオオアカゲラに特化した保全は行われておらず、登録地以外は森林保全も保証されていません。オーストンオオアカゲラは奄美大島全域に生息する鳥であり、島の一部を保全するだけでは不十分です。島全体の森林を保全していくためにも、遺伝的な多様性を調べ示すことで、保全の必要性について提唱していきたいと考えています。これはオーストンオオアカゲラだけではなく、奄美大島に生息する動植物全体に関わることです。私たちはオーストンオオアカゲラを通じて奄美大島全体の生物多様性を保全することにつなげていくことを目標としています。
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ご支援をよろしくお願いいたします
- オーストンオオアカゲラの遺伝子の多様性を調査していくためには、血液からDNAを分離してその情報を分析するための費用が必要となります。これに加え、奄美大島までの渡航費、宿泊費、レンタカー代が必要となるほか、当然ながら作業する人間の人件費もかかってきます。そのため、この活動を行うためには相当の費用が発生するのです。オーストンオオアカゲラを保全し、そして奄美大島の自然を守っていくためにも、この調査・研究にご理解いただき、ご支援のほどよろしくお願いいたします。
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日本鳥類保護連盟とは
- 日本鳥類保護連盟は公益財団法人です。鳥類をはじめとする野生生物の保護の必要性を広く普及するとともに、その保護を推進し、生物多様性の保全に貢献することを目的として、1947年に設立後、これまで75年間活動を続けてきました。
今、日本鳥類保護連盟では鳥たちを守っていくために、「普及啓発事業」として未来の自然保護を担う子どもたちへの教育、啓発や、鳥の生態など鳥を保護するために必要な「調査・研究事業」、そして国境を越えて移動する鳥たちを守るためにフィリピンなどと共同で行う「国際協力事業」の3つの事業を柱に、日々活動を進めています。
鳥類やそれを取り巻く自然を守り、自然と人が共生する社会づくりに貢献したい。私たちはそのために「Leave No Birds Behind!(全ての鳥たちを取りこぼさず、未来へつなげていく)」をスローガンに活動しています。 -
普及啓発事業
- 普及啓発事業では、「愛鳥週間全国野鳥保護のつどい」の開催や子供たちを対象にした「全国野生生物保護活動発表大会」、愛鳥週間を通したポスター掲示や講演、テグス拾い、親子を対象に巣箱作りと巣箱架けを指導するなど、野鳥保護につながる意識を高めるためさまざまな活動を展開しています。また、豊かな自然環境を保全していくことはもちろんのこと、都市部に点在する公園や街路樹などの緑地、個人宅の庭など小さな緑地にも注目し、それらを鳥類を始めとした生き物が利用できるよう、所有者の意識を変えるための活動も実施しています。私たちはこれらの緑地を「バードピア」と名づけ活動を広めています。
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調査・研究事業
- 調査・研究では奄美大島での活動のほか、シマフクロウの保全活動、コアジサシの保全のための調査・研究、希少猛禽類の保全のための取り組み、外来種のワカケホンセイインコの生態調査等を実施しています。
中でもコアジサシは、渡り鳥のため北半球と南半球を行き来します。そのため、フィリピンやインドネシア、オーストラリアの調査者とも連携し、実際に海外の生息地の調査を行って、中継地や越冬地の把握を通した保全活動を推進しています。また、アジアオセアニア地域だけでなく、ヨーロッパのリトアニアにおいても、現地大学に技術提供や物資の提供を行いながら共同研究をし、コアジサシの種としての保全に取り組んできました。 -
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国際協力事業
- 国際協力事業では、調査・研究事業での取り組みに加え、フィリピンにおいて、渡り鳥として日本とフィリピンを往来するサシバやアカハラダカを保全するための取組をフィリピンのNGOと協力し、密猟対策や植樹、調査の為の中古双眼鏡の寄贈などを行っています。そのほか、ネパールでは現地の調査者が独自に財源を得て調査・研究や保全活動を進めていけるよう、エコツアーの定着のための取り組みや、調査技術や物資の提供も行ってきました。
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ご支援をお願いいたします
- 私たちの活動は皆様からのご寄付によって支えられています。野鳥を始めとした多くの動植物が生息する自然環境を保全していくためにもご支援をよろしくお願いいたします。
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